大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25(う)1973 高裁判例

主 文

本件控訴は孰れも之を棄却する。

理 由

津地方検察庁検察官検事内田実の控訴の趣意は、末尾添附の同検事名義の控訴趣

意書と題する書面(但被告人三名に関する部分)記載の通りであり、又右被告人三

名の弁護人桜井紀、同西村美樹両名の控訴の趣意竝右検事の控訴の趣意に対する答

弁は、末尾添附の右弁護人両名名義の控訴趣意書と題する書面(但被告人三名に関

する部分)記載の通りであるが、是等に対し当裁判所は次のように判断する。

右弁護人両名の控訴趣意に付いて、

<要旨>千九百四十五年九月十日附連合国最高司令官の日本政府に対する覚書「言

論及新聞の自由に関する件」第三</要旨>項に所謂「連合国に対する破壊的な批判」

とは、虚偽の事実に基くと否とを問わず、連合国全体又は其の構成員たる一部の国

に対する名誉、信用を毀損し、又は其の政策、行動に妨害支障を与えるが如き可能

性ある言動を為すことを指称するものと解すべく、従て連合国であるものに対し、

右のような破壊的な批判をすれば、之が占領目的に有害な行為をしたものとして、

昭和二十一年六月十二日勅令第三百十一号第二条に違反し、同第四条の処罰を免れ

得ないものと謂わなければならない。ところで所論ビラに掲記されて居たスローガ

ンは原判決認定の如くであつて、之によれば、同スローガンの内容は孰れも連合国

の一員である米国の日本占領軍が、千九百五十年六月二十五日及同月二十七日附国

連安全保障理事会の決議に基き、国連軍の中心となり、北鮮軍に対して行つて居る

軍事行動を、朝鮮に対する不法な武力干渉又は武力侵略であるとして非難攻撃する

趣旨のものであると認められるから、斯の如き内容のスローガンが掲記されて居る

所論ビラを、其の内容を知悉し乍ら貼付掲示することは、連合国の一員たる米国に

対する名誉、信用を毀損し、又は其の行動に妨害支障を与える可能性を有するもの

であり、将しく前掲覚書に所謂「連合国に対する破壊的な批判」に該当するものと

謂うべく、而して被告人Aが右ビラの内容を知悉して、同ビラを貼付掲示したもの

であることは、原判決が其の挙示する証拠によつて認定して居る通りであり、又被

告人B・同Cの両名が夫々右ビラの内容を知悉して居たことは、原判決が同被告人

両名に対する原判示第三事実を認定するに際り挙示する証拠によつて認められる同

被告人両名の行動に照し認定し得べく、原判決が論旨摘録のように、「被告人Cは

右B・又は他の者から右ビラの内容を当然聞知していたものと認めなければならな

い」旨説示して居るのも、右と同趣旨に出でたものであることが、其の説示自体に

徴し明らかであつて、此の点に関し原判決に所論のような違法はなく、然らば右ビ

ラの内容を知悉して居た被告人等が、夫々原判決認定の如く右ビラを貼付掲示した

以上、縦令之に付訴追されることを予測しなかつたとするも、前記勅令第三百十一

号第四条の罪責を免れるに由なく殊に米国は連合国の中でも日本占領軍の中心を為

す国であり、其の北鮮軍に対する軍事行動は、在日米占領軍と極めて密接な関係に

あり、日本に対する占領目的と不離の関連性を有するものであるから、斯の如き米

国の軍事行動を非難攻撃することは、原判決が説示するように、明らかに占領目的

に有害と謂わなければならない従て原判決が被告人等に対し夫々原判示事実を認定

の上、之を原判決説示の各法条に問擬したのは洵に正当であつて原判決には所論の

ような違法の廉が毫もなく、畢竟所論は独自の見解に依拠して、原判決の正当な措

置を非難するに過ぎないから、論旨は其の理由がない。

右検事一の控訴の趣意に付いて、

本件訴訟記録竝原裁判所に於て取り調べた証拠を精査し、之に現われて居る被告

人等の本件犯罪の動機、犯罪の態様、犯行前後其の他諸般の情状を参酌考量する

も、原判決の被告人等に対する量刑措置を不当と認め得ないので、論旨は理由がな

い。

右説明のように本件控訴は孰れも其の理由がないので、刑事訴訟法第三百九十六

条に則つて、主文のように判決する。

(裁判長判事 深井正男 判事 河野重貞 判事 上田孝造)

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